May 04,2020

〈世民、聡明勇決にして、識量人に過ぐ。隋室の方(まさ)に乱るるを見て、陰(ひそか)に天下を安んずるの志有り〉(『資治通鑑』巻183)
太原にいた頃の李世民のイメージです。ちょっと大人めに描いちゃった

twitterにあげていた落書きをアーカイブに収納しました
読んだ本や論文の感想をサイトに残そうと思ってるのに毎回おざなりにしちゃうので今年読んだリストだけメモします

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読んだ論文

「大唐創業起居注考」(福井重雅、『史観63・64』 早稲田大学史学会 1962)
…唐朝創業時の記録文書とされる温大雅撰『大唐創業起居注』についての論考。『大唐〜』の史料的価値を評価する羅香林の先行研究を反証し、『大唐創業起居注』の読解に新しい視座を開いている
「『大唐創業起居注』の性格について」(氣賀澤保規、『鷹陵史学8』 佛教大学 1982)
…上記の福井や羅香林らの代表的な先行研究を詳細に検討し、『大唐〜』の「唐王朝創業記」としての側面を丹念に読み解いた論考
墓誌や墓碑をほぼ用いず、正史や通鑑といった基礎史料メインでここまでの論文が書けるのがすごい
『大唐創業起居注』の編纂に携わる温大雅、裴寂といった唐朝創業時の重要人物の立伝からパーソナルな部分を理解することで『大唐〜』を読解するのが面白かったです
「唐太宗の婚姻政策再考」(堀井裕之、唐代史研究22 『唐代史研究会』 2019)
…面白い!李世民はやっぱり門閥主義の破壊者だったんだなあ
高宗や則天武后は太宗の賢才主義理念の継承者であり、太宗・高宗と則天武后の政治路線には断絶ではなく連続性が指摘されるという結論が熱かったです
「唐の太宗は『帝王略論』を読んだのか」(会田大輔、『明大アジア史論集23』 明治大学東洋史談話会 2019)
…タイトルはちょっと釣りが入ってるけど内容は堅実。『隋高祖論』のような執筆物、『貞観政要』などに見える問答など、李世民の皇帝論と『帝王略論』を比較し、李世民が『帝王略論』から受けた影響や虞世南との見解の相違を比較していく。タイトルのオチを言うと、読んでます
「貞觀政要の成立」(原田種成、『斯文22』 斯文会 1958)
「貞観政要を通じて見たる宋刊本に対する疑い」(原田種成、『書誌学1』 日本書誌学会 1965)

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読んだ本

・一月
『日中宮城の比較研究』(吉田歓、汲古書院 2013)
『日中古代都市と中世都市平泉』(吉田歓、汲古書院 2014)
『キーワードで読む中国古典3 聖と狂:聖人・真人・狂者』(内山直樹・土屋昌明・廖肇亨著 志野好伸編集、法政大学出版局 2016)
『中国の伝統美学』(李沢厚著、興膳宏・松家裕子・中純子訳、平凡社 1995)
『宋元戯曲考』(王国維著、井波陵一訳、平凡社 1997)
『京劇の世界(見て読む中国)』(徐城北著、陳栄祥・施殿文訳、東方書店 2006)
『京劇役者が語る京劇入門』(魯大鳴、駿河台出版社 2012)

・二月
『通俗二十一史 第九巻 通俗唐太宗軍鑑 通俗唐玄宗軍談』(早稲田大学編輯部編、早稲田大学出版部 1912)
『中国玉器発展史 下巻』(常素霞著、鶴間和幸監訳、菅野恵美訳、科学出版社東京 2019)
…科学出版社東京の本なのにコンパクトで読みやすい。唐人は抽象的な意匠より、生き生きとした花鳥のモチーフが好きらしい。わかる。
『中国陶磁史』(葉喆民原著、出川哲朗監訳、徳留大輔・新井崇之訳、国書刊行会 2019)
『道教の経典を読む』(増尾伸一郎・丸山宏編、大修館書店 2001)
『長安』(佐藤武敏、講談社 2004)
『道教の神々』(窪徳忠、講談社 1996)
『道教事典』(野口鉄郎・福井文雅・坂出祥伸・山田利明編、平河出版社 1994)
『中国古代兵器図冊』(劉旭、北京国家図書館出版社 1999)
…弓、槍、槊などの武器の王朝別の形状がカタログ形式で掲載されてる本。掲載されている図像は宋代以降のものが多めだけど良かった

・三月
『中国正史の基礎的研究』(早稲田大学文学部東洋史研究室編、早稲田大学出版部 1984)
…やっと読んだ。福井「『旧唐書』-その祖本の研究序説-」は、『旧唐書』だけではなく唐代の実録・国史の編纂事業について掘り下げられていてとても勉強になりました
『シリーズ中国の歴史2 江南の発展:南宋まで』(丸橋充拓、岩波書店 2020)
『シリーズ中国の歴史3 草原の制覇:大モンゴルまで』(古松崇志、岩波書店 2020)
『隋唐の仏教と国家』(礪波護、中央公論社 1999)
…中公の『隋唐帝国と古代朝鮮』を読んでも感じたけど、礪波先生の語る唐初の道仏事情は正直ぶっ飛んでる
李淵と李世民の衝突に仏教と道教の対立はそこまで関係してないと思う
『シリーズ書道基本名品集 行書編17 王羲之興福寺断碑・唐太宗晋祠銘』(比田井南谷編、雄山閣 1986)
…《晋祠銘》の原文と読み下しが載ってる。月日は窮まる有るも、英声は匱(つ)きず。天地は極むべきも、神威は墜つる靡し。万代千齢、芳猷永く嗣がん。

・四月
『敦煌の民族と東西交流 敦煌歴史文化絵巻』(柴剣虹・栄新江主編、栄新江著、高田時雄監訳、西村陽子訳、東方書店 2012)
…再読。敦煌の歴史を彩る多彩な民族と文化を図版たっぷりで解説していて面白い
『ヴィジュアル版 シルクロード歴史大百科』(ジョーディー・トール著、岡本千晶訳、原書房 2019)
…図版に特化したシルクロード本。読みやすいです
『アニメで読む世界史2』(藤川隆男・後藤敦史編、山川出版社 2015)
…齊藤茂雄「ムーラン 敵側からみた歴史世界」を読んだ。副題の通り「ムーラン」では敵役として野蛮で残虐に描かれる遊牧民を主軸として、彼らの文化や中国へ侵攻する理由、中華との衝突・融合・交流の歴史を説明し、アニメに横たわる偏見を丁寧に読み解いている。あとがきで現代における歴史認識についての重要な指摘をしているので、歴史創作クラスタさんにはあとがきだけでも読んでほしい
『中国甲冑』(凱風、上海古籍出版社 2006)
…堅実な文章と豊富な図像で読みやすいのに、図像の出典がほぼ記載されていないので笑った。歴クラ泣かせ