December30,2021 2021年に読んだ本

Picrewの「🍞 동글반죽 메이커 🍞」で作った正装尉遅敬徳李世民

これはPicrewの「유령메이커」で作ったクリスマス仕様李勣李世民

毎年サイトの日記に書いてる読書おさらいです
今年は私生活が忙しくて全く本が読めていないので歴創関係で読んだ本と買った本を併せてメモします


一月
『鬼の話』(文彦生編、鈴木博訳、青土社 2020)
中国全土の「鬼」に関する説話を収録した本。李世民さんが可愛い話が幾つか載ってました
推し、民話でも可愛い〜〜ってはしゃいだ記憶はあるけど話の詳細は何も覚えてないです(年明けの読書からこの調子だった)
『あじあブックス052 よみがえる中国の兵法』(湯浅邦弘、大修館書店 2003)
これはフォロワーさんがTwitterで呟いてたので読んだ 湯浅先生の本なので安定して面白いです
『李衛公問対』に関してはこの本より「李衛公問対」の兵学思想」(大阪大学文学部紀要39 1999)(別窓でciniiに飛びます)の方が充実してます
『貞観政要 全訳註』(呉兢撰、石見清裕訳註、講談社 2021)
全訳註なのもすごいけど石見先生の研究の概説まで読めてすげ〜
李世民が貞観十年以降だらけたっていうのは納得できないけどこの分量の訳註と解説を残してくれたことへの“感謝”が先立つ本
『大唐秦王詞話』(諸聖鄰撰、杜維抹校点、中州古籍出版 1986)
買ってときどきパラ見してますが、尉遅敬徳が李世民の軍に投降してから秒で世民と同衾してて情緒のねえ同人誌だな…と思いました
(初夜まで長い道のりがあるか合意の上での初夜をやり直す(含意のある言葉)タイプのcpが好きなので)
『皇帝李世民』(中国中央電視台、2006)
今年買って良かったもののベスト
このドラマのおかげで自分の李靖李世民観を掘り下げることができました 李世民総受け十年選手になろうとしている年に良い刺激を得た
『資治通鑑』に一回しか登場しない人物の名前まで拾うほど枝葉末節に拘る脚本なので、10分に一回くらいのペースで恐ろしく細かい小ネタ、俺じゃなきゃ見逃しちゃうねになります(というか知らない人物名が出てくるたびに寒泉と漢籍電子文獻資料庫で検索している)


二月
『中国史における革命と宗教』(鈴木中正、東京大学出版会 1974)
〈(隋末の)反徒の活動は隋朝権力者に対し容赦なき誅戮破壊を加える行動様式から、好皇帝・好官吏の出現を歓迎するという態度に変わってきた。〉(p42)〈隋末人民生活の恐るべき破壊の中で、救世主待望の風潮が強く人々の精神を支配していたことが窺われる。〉(p43)
このあたりのくだり、ベタすぎるとも思うけど実際乱世に生きたらこんな思考になると理解すべきなんだろうと思った
面白かったけど隋末人民の心理については谷川道雄先生の「隋末の内亂と民衆:剽掠と自衞」(『谷川道雄中国史論集』下巻、汲古書院 2017)の方が解像度はかなり高いと思います
『長安の春秋 人物中国の歴史6』(駒田信二編、集英社 1987)
文庫の方買ってなかったので買いました
『唐代前期北衙禁軍研究』(林美希、汲古書院 2021)
興味あるところだけ先に読んだり変な読み方してます
阿史那賀魯x李世民は公式…ってコト!?


三月
『園冶:破解中國園林設計密碼』(計成、華滋出版 2015)
明の計成が記した造園技術書をカラー図版入りで解説した本
表紙見てこのデザインを日本でやる人いないな…と思ってそれだけで買いました 中身も良かったです
『绘画本 中国古代史』上中下(塗万松、河南美術出版社 1992)
今年存在を知って読んだ本
原書房の『絵で見る中国の歴史』(『絵画本中国通史』浙江少年儿童出版社 1992の訳本)と執筆者が重複してるんですが、『絵画本中国通史』が連環画スタイルなのに対して『绘画本 中国古代史』はコマ割りが自由でイラストだけ見るならこっちの方が楽しいです
『長安 絢爛たる唐の都』(京都文化博物館、角川書店 1996)
持ってなかったので買いました
『新・歴史群像シリーズ 18 大唐帝国』(学研プラス、2009』
これも持ってなかったので買いました 巻頭の再現イラストが良すぎ
『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史 4 唐・シルク=ロードとイスラーム教の発展 四〇〇~八〇〇年』(羽田正監修、KADOKAWA 2021)
グローバール・ヒストリーの視点から5〜9世紀を描く学習まんが
李氏が元々は北方の血統であること、安禄山のようなソグド系・突厥系人士の存在、ソグド人を介してシルクロードからもたらされたエキゾチックな西域文化が唐朝で栄えたことなどを抑え、多様な民族から成り立つ唐王朝の繁栄と文化の成熟を描き出しています
主な参考図書・資料に『詳説世界史』などの鉄板本の中に『シルクロードと唐帝国』『オアシス国家とキャラヴァン交易『ソグド人の美術と言語』などが挙がっており、唐王朝を描く上で使ってる資料が完全に“今”のもので、それらがきちんと活用されていて素晴らしいです
『絵で見る中国の歴史』全6巻(鈴木正弘訳、原書房 1995)
日本の古本屋さんにリクエスト送って全巻セットを購入しました


四月
『唐代の皇太子制度』(千田豊、京都大学学術出版会 2021)
積読 タイトルに「唐代の」と入っているけど第一章は「西晋における太子師傅―皇太子の守り役の役割」から始まるので魏晋クラスタでチェックし逃してる人がいるんじゃないかと思う
『クローズアップ中国五千年 第4巻 隋・唐 分裂の時代から大帝国建設へ 西暦280~907年』(陳舜臣・立間祥介・平山郁夫・守屋洋編、世界文化社 1996)
これも持ってなかったので買いました
〈太宗は李勣が組織のために働くというよりは、個人の恩を中心とする人間ではないかと心配し、次代の高宗に恩を感じさせようと一度わざと左遷した。高宗の即位後、李勣を高い地位に付けさせてやれるように配慮したのである。〉 解釈一致です
確か『中国英傑事典』(世界文化社 1997)も同じ解釈だったと思うんですが1990年代はこういう見方が主流だったのか?
『歴史読本 1992年11月号 中国4000年 皇帝の覇業』(新人物往来社、1992)
歴史読本の中国の創業の皇帝たちを特集した本
楊堅と李淵へのドライだけど納得できる論評が読めます 皇帝特集なのに読後の寂寥感はなに…
『歴史読本1996年11月号 中国スーパー軍師群伝』(新人物往来社、1996)
〈(李靖と李勣は)父は頼りなく、実の兄とは不仲な李世民にとって、心の父、心の兄ができたようなものであったのかもしれない。この両者を左右の翼として、李世民は天下にはばたく〉
あ〜(田中芳樹先生の文です)


五月
『アジア遊学242 中国学術の東アジア伝播と古代日本』(榎本淳一編、勉誠出版 2020)
買った 東部ユーラシア論の台頭もわかるけど、東アジア地域の特殊性を考えるために「東アジア文化圏」の概念ついてもっかい再検討・再評価しようという榎本先生の序文になるほどなとなりました
あと「Ⅰ 中国における学術の形成と展開」の章の論文は全部面白いです 塚本先生の「前四史からうかがえる正統観念としての儒教と「皇帝支配」―所謂外戚恩沢と外戚政治についての学術的背景とその東アジア世界への影響」の前半部分だけはギアの入り方がすごくてあんまりついていけませんでしたが
会田先生の「『帝王略論』と唐初の政治状況」で、虞世南について「仏教信者であり、武徳四年に法琳が『破邪論』を執筆した際には序を撰している」が目から鱗でした
『如果历史是一群喵7 隋唐风云篇』(肥志、广东旅游出版社 2020)
中国の大人気擬猫化中国史漫画 読む用と保存用に2冊買いました
挙兵に際して勅書を偽装する淵喵とか建国直後の脆弱な唐を強キャラに育てる世民喵とか人物の見方の角度が近いのが良かったです
淵喵と美豆良世民喵のツーショットが可愛い


六月
『隋唐帝国形成期における軍事と外交』(平田陽一郎、汲古書院 2021)
買って積んでます 林先生の『唐代前期北衙禁軍研究』が「東部ユーラシア史の視点から唐代の北衙禁軍を見直す」と明言されているのに対し、平田先生の本には「東部ユーラシア史(論)」的な文言があまり見えず、この言葉を使うのに慎重なのかなと思いました
『性からよむ中国史:男女隔離・纏足・同性』(スーザン・マン、平凡社 2015)
めちゃくちゃ面白くてひっくり返った本
邦題には「中国史」とありますが、原題は『ender and sexuality in modern Chinese history』で、主眼は中華民国・中華人民共和国、それに先立つ後期帝政中国(明清)におけるジェンダーやセクシュアリティに置かれています
ただ古代からの通史的概説も語られているので古代史クラスタにもおすすめ
歴史を学ぶという行為は「長期間(数千年という単位)で維持された“男社会”」を学ぶに等しいので、改めて自分は中国史におけるジェンダーやホモソーシャルに対する理解を深めるべきだなあと襟を正しました
『中国史SF短篇集-移動迷宮』(大恵和実編集・翻訳、上原かおり、大久保洋子、立原透耶、林 久之翻訳、中央公論新社 2021)
人生ではじめ手を出した中国SFだったんですがすごく面白かった!
コーヒー伝来SF馬伯庸「南方に嘉蘇あり」と隋末唐初が舞台の程婧波「陥落の前に」が特に大好きです
史実ネタや実在した登場人物についての訳注や挙げられている参考文献も満足度が高いです
『創世の龍 〜李世民 大唐建国記〜』(山東電影電視劇、2006)
これも手元に置いておこうと思い買いました まだ見てないです
沈晓海演じる李世民さんが美少女すぎる


七月
『中国社会風俗史』(尚秉和著、秋田成明訳、東洋文庫 1969)
持ってなかったので買いました
『中国五千年女性装飾史』(周汛・高春明著、栗城延江訳、京都書院 1993)
これもようやく買いました 女性装束に関する漫画いろいろ描きて〜


八月
『中国ジェンダー史研究入門』(小浜 正子編、京都大学学術出版会 2018)
いやーこれすごいな!考古史料から中国ジェンダー史研究が進んでるとか、唐律は漢律と比べて男尊女卑(夫尊妻卑)とか、知らないこと多すぎて自分の無知さにショック受けました
これ読んだら「隋唐は北方の気風を継いで女性が強かった(その流れから則天武后の台頭が起きた)」という言説も無批判に口に出せない
今年出た『角川まんが学習シリーズ 世界の歴史4 唐・シルク=ロードとイスラーム教の発展』はグローバルヒストリーの観点から隋唐王朝を描いているけど、則天武后に関しては新羅の善徳女王や日本の持統天皇と並列して「7〜8世紀の東アジアは女帝の時代であった」と縦軸ではなく横軸から触れていて、こっちの方が無難じゃないかと思う
『凌煙閣功臣図』(劉源絵・朱圭刻・胡真撰文、上海古籍出版社 2014)
『画猫·夢唐』(瓜几拉絵、湖南美術出版社 2018)
『唐太宗伝-歴代帝王伝記』(趙克堯・許道勲、人民出版社 2015)
『隋唐生活掠影』(畢宝魁、知識産権出版社 2016)
『走进日常:唐代的衣食住行』(黄正建、中西書局 2016)
『貞觀盛事』(半島音像出版社出版 2003?)
『貞觀盛事』(上海人民美術出版社 2019)
『京剧电影工程 貞觀盛事』(京剧电影工程従書編委会編、2021)
『中国粧束:大唐女児行』(左丘萌著、末春絵、清華大学出版社 2020)
『唐风美人志』(南方赤火・顧閃閃、長江出版社 2020)
『汉风潮流志 古人很潮』(古人很潮、長江出版社 2020)
『美人风华志』(南方赤火等、長江出版社 2021)
通販で中国書籍を買いまくる会


九月
『中国古代甲冑図鑑』(劉永華著、春日井明訳、アスペクト 1998)
ようやく買いました あのネットでよく見る唐代の幞頭の変遷をまとめた画像はこの本(の原書の『中国古代軍戎服飾』)が出典です
ネットのオタクがこの画像引用するたびせめて通販サイトの原書のリンク貼れよと思う
『唐の太宗(清谿艸廬叢書第2)』(清家瑩三郎、康文社 1934)
『唐の太宗と隋唐文化』(清家瑩三郎、光風館 1942)
これもようやく買いました回顧と展望か何かで「教養書の域を出ていない」と言われてたけど今読んでも十分面白いです
『china crossroads of culture 中国 美の十字路展』(曽布川寛・出川哲朗監修、大広 2005)
持ってなかった図録を買う会
曽布川寛先生が監修してるから買いました 新疆ウイグル自治区博物館の所蔵品がいっぱい載っててすげー


十月
『中国南北朝寒門寒人研究』(榎本あゆち、汲古書院 2020)
「第四編 南朝関連史料研究」以降しか読んでないですが今年ベストを選ぶとしたらこれです
基礎史料を読み込み史料を読み比べるだけでもここまでの史料批判ができるんだ…と思いました 感動するレベル
そのうち感想文まとめたいです 
『長安史蹟の研究』(足立喜六、鳥影社 2006)
ようやく買いました 附図完備の極美本を買えてハッピー
『図説中国文明史6 隋・唐 開かれた文明』(稲畑耕一郎、創元社 2006)
図版多目でいい本だけど尉遅敬徳を和闐人、長孫無忌を鮮卑人として扱ってるのは違うだろうそれは
『南北朝時代―五胡十六国から隋の統一まで』(会田大輔、中央公論新社 2021)
『古代中国の24時間-秦漢時代の衣食住から性愛まで』(柿沼陽平、中央公論新社 2021)
本を買って積む会


十一月
『世界美術大全集 第4巻 東洋隋唐編』(百橋明穂・中野徹編、小学館 1997)
『世界美術大全集 第15巻 中央アジア編』(田辺勝美・前田耕作編集、小学館 1999)
『中国の建築装飾』(楼慶西著、訳、李暉・鈴木智大訳、国書刊行会・科学出版社東京 2021)
歴史創作の資料として目を通しましたが全部良かった!『中国の建築装飾』は図版多くてかなりいいです
世界美術大全集東洋隋唐編、李勣を胡人として扱ってるのは違うだろうそれは
『東洋服装史論攷《中世編》』(杉本正年、文化出版局 1979)
これもようやく買いました 『中国服飾史図鑑』がカバーしていない天子の祭服の詳細、突厥・西域諸国・朝鮮三国の服飾文化などの領域が学べるので中国〜図鑑と併せて揃えておくといいと思います


十二月
『唐長安大明宮 上下』(楊鴻勲著、向井佑介監訳・高井たかね・田中一輝訳、科学出版社東京 2021)
読み途中 これも手元に置いておきたい
『元刋雑劇の研究 三奪槊・氣英布・西蜀夢・單刀會』(赤松紀彦・井上泰山・金文京・小松謙・佐藤晴彦・高橋繁樹・高橋文治・竹内誠・土屋育子編、汲古書院 2007)
これも手元に置いておきたくて買った
『対訳中国歴史小説選集8 新刻按鑑演義全像唐国志伝』(熊大木撰・徳田武編・解説、ゆまに書房 1984)
どんな本かわからず買ってみたら読者に読ませる気のないレイアウトで笑いました
『平城遷都1300年記念春季特別展 大唐皇帝陵』(附「玄宗皇帝と聖武天皇の時代」)(奈良県立橿原考古学研究所附属博物館編、奈良県立橿原考古学研究所附属博物館 2010)
『大唐王朝の華:都・長安の女性たち:1996-1997』(兵庫県立歴史博物館・朝日新聞社編集、「大唐王朝の華-都・長安の女性たち」展全国実行委員会 1996)
持ってなかった図録を買う会2
『隋代史』(アーサー・F・ライト著、布目潮渢・中川努訳、法律文化社 1982)
ようやく買いました 隋にも唐にもリスペクトがあるし、隋朝の人物への解像度が高いので今読んでも古臭さを感じません
登場人物の人間性の理解が深い割にあんまりベタベタしてないのも読みやすいです


年始に出るので予約した本
『岩波講座世界歴史06 中華世界の再編とユーラシア東部 4~8世紀』(荒川正晴ら編集、岩波書店 2022)
荒川正晴先生編集 楽しみ
2022年の年初は勝ち確です