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「玄武門の変」は、中国史上極めて血なまぐさく残酷な宮廷政変である。李世民は玄武門において精密に布局し、果断に実行し、彼の射た一矢は兄の喉を貫いた。中国古代において、暴力によって政権を奪取する事件は枚挙にいとまがなく、歴史に絶えず記載されている。しかし、暴力によって政権を奪ったものの中で、李世民のように輝かしい業績を残したものは、殆ど存在しない。
「貞観の治」については、古来より史家が得々と語り継いできた。唐の太宗は在位二十三年のなかで、善く納諫し、政治に励み、君主制の時代に文明的な政治環境と君主と臣民の調和した関係を創造しただけでなく、唐朝三百年の制度の基礎を定め、またその後千年の中国の明主の模範となった。
貞観の時代の誕生と発展には太宗の英明さが必要不可欠であった。しかし“英明”の二文字だけでは、太宗が輝かしい業績を成し遂げられた理由も、玄武門での血なまぐさい殺戮を解明することもできないだろう。
玄武門の変から貞観の治まで(従玄武門之変到貞観之治)、李世民は一体何を経験したのだろうか。本書は史料に立脚し、文章の奥に隠された歴史のニュアンスを探り、人物の名言されていない動機を探り、なぜこの時代に、なぜこの帝王が、これほどの偉業を成し遂げたのかを解き明かしていく。
(孟憲実『従玄武門之変到貞観之治』(浙江人民出版社 2021)の紹介文の訳)


ドラマ贞观之治の脚本にも参加している孟憲実(中国の歴史研究者)を調べていてこの本の存在を知った
買うしかない…

読書

五月の読書

・読んだ
『大唐帝国の女性たち』(高世瑜著、小林一美・任明訳、岩波書店 1999)
感想

『ユーラシアの風 新羅へ』(山川出版社 2009)
感想

『死ぬまでに見たい中国の世界遺産』(羅哲文・李敏編著、河野肇訳、エクスナレッジ 2012)
感想

『天変地異はどう語られてきたか:中国・日本・朝鮮・東南アジア』(串田久治編、東方書店 2020)
感想
儒教、仏教、イスラーム、キリスト教といったさまざまな思想や宗教がどのように「天変地異」を語ったのかを紐解く本
時代や地域に関しても古代中国から近代朝鮮、琉球王国、インドネシアとアジア各地が幅広く取り扱われているので、相対的に中国における儒教的価値観の特異性が理解できるのが良かった
ちょっと射程が広すぎるけど最終章に執筆者9名による座談会が収録されていて大まかに本書の内容がまとまっているので、これを総括として読んでおけということだと理解しました

『中国の服飾史入門 古代から近現代まで』(劉永華著、古田真一・栗城延江監修・翻訳、マール社 2023)
図版多くて歓喜だったんですが原書の『中国服饰通史墙书』から相当端折られてるな…と思ってしまう(最低の顧客)(原書買え)
劉永華先生の服飾再現イラストは最高です
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読書

今読んでるのは東方選書の『天変地異はどう語られてきたか』(串田久治編、東方書店 2020)
これかなり面白い…
串田先生の本はあじあブックスの『王朝滅亡の予言歌 古代中国の童謡』(大修館書店 2009)くらいしか読んだことがなくて、王朝滅亡〜を読んだときも読みやすくていい本だなあくらいにしか思ってなかったんですが、この本は自分が儒教や天変地異を多面的に捉えきれていない視野の狭さを痛感させられてバチバチに刺さる
twitterにネチネチ書いてたのはこの本のことだったんですが、しばらく経ってみると自分の考え方のほうが間違ってて(間違っててというか「民」の心に寄り添ってなくて)よくないな…となったのでちゃんと咀嚼してから感想まとめたいです
twitterのフォロワーさんが過去に串田先生の『儒教の知恵―矛盾の中に生きる』を儒教入門書としてお勧めしてたのでそっちも気になる

読書

松下憲一「后妃のゆくえ ─北斉・北周の後宮─」
今度『中華を生んだ遊牧民 鮮卑拓跋の歴史』を出す松下先生の論文
趙翼が「古今の中で尤も醜悪」とディスった北斉後宮の「乱れ」について、レビレート婚との関連性を踏まえて実態を再検討し、さらに踏み込んで北斉・北周で見られるレビレート婚的な事象が遊牧国家における伝統的なレビレートとまったく同質のそれなのか?というところまで指摘する
楊廣の後宮についても若干の言及があり、隋末唐初の後宮を考える上でも勉強になりました
李世民さん崩御後に妃嬪たちは出家して感業寺(『長安縣志』によれば唐代の禁苑にあった皇家のための寺院)にいたらしいけれど、「皇帝の崩御にともない后妃がみな出家させられるというのは実際には稀」らしい そうだったんだ

読書

『死ぬまでに見たい中国の世界遺産』(羅哲文、李敏編著、河野肇訳、エクスナレッジ 2012)
編著が『中国歴代の皇帝陵』の羅哲文先生じゃん!となって読んだ
2011年までに登録済みの中国の世界文化遺産・世界自然遺産をすべて網羅した(してるはず)写真集
とにかく写真が綺麗だし、どの世界遺産も複数ページ割いてしっかり見せてくれる。紫禁城なんかは20pくらい割いてる
日本語で読める紫禁城に特化した写真集なら于倬雲『紫禁城宮殿』、中国の庭園なら青羽光夫『中国庭園』などがあるけど、中国の長城、宮城(紫禁城)、皇帝陵、石窟、庭園、自然風景などをバランスよく見られる写真集としてかなりいいのではと思います

読書

『ユーラシアの風 新羅へ』(山川出版社 2009)
東アジアの潮流の中でユーラシア西方の香りを伝える新羅文化をテーマにした同名展覧会のカタログ
古新羅(統一以前新羅)は中国由来の外来物がほぼ出土しないのに西アジア・中央アジア由来の文物は大量に出土しているらしい
ミホミュの棺床屏風が載ってるのが嬉しいし、全体的に写真の見せ方がいい
表紙がダサいという理由で積極的に手に取ったことがなかった山川出版社のMUSAEA JAPONICAシリーズ、コンパクトなサイズでこれだけいい写真が見られるなら資料として使えると思いました
次『栄光のペルシア』『シルクロード 華麗なる植物文様の世界』あたり読みたい

読書

『大唐帝国の女性たち』(高世瑜著、小林一美、任明訳、岩波書店 1999)の感想
マストドンに投稿したトゥートをちょっとだけ文面整えて移植しています

あまりに名著すぎてオタクはこの本を形容する言葉を持ちません…
あらゆる史料を渉猟して唐代の様々な階層の女性の実態に迫っているけれど、特に詩や小説に描き出された女性の生々しい姿を見逃さないのがめちゃくちゃ凄い
回顧と展望で小説史料から女性像を窺う試みをしてると評されてたけどこういうことだったんだんですね
もちろん詠み手・書き手が男性の場合そこに女性を客体化する目線が含まれていることもちゃんと考慮されてるし、文士・詩人の女性へのまなざしについてもそれが差別を含んでいることに(当たり前だけど)言及されている
当時の女性の生き様を通じて大唐帝国における男性社会の苛烈さ、残酷さ、赤裸々さ、「一面では女性を差別し、一面では恐れ、一面では同情する」という矛盾、宋代に入り封建道徳が厳重化する前の一瞬の輝きも描き出していて、唐王朝のオタクとして改めてちゃんと読んでよかったです
というか唐王朝のオタクだからこそ読んでおかないといけない本だと思いました
久しぶりにいい読書体験でした…この本で得た知識を創作にも還元できるように頑張りたいです 敬具

訳者の小林一美先生はこの本を翻訳するにあたり原著からかなりの「加筆訂正、削除補増」を行ったらしいのですが、文章は淡々としてて読みやすいし引用されるエピソードにもほぼほぼ出典がついてるので、これ単体で読んで私はとくに違和感はなかったし満足でした
あと訳者あとがきで大唐帝国の壮大な「捉え直し」をしていて読んでたらけっこうウルッと来たんですが、そのあとにこの本に引かれる約260首の唐詩のうち邦訳のないものは井波律子先生・井波陵一先生夫妻が担当し、井波陵一先生に至っては全文の校正(訳文や出典の訂正、史料の確認、文章の推敲、「敦煌変文」の訳文案)を引き受けてくださったと書いてて凄すぎるだろ!!!て腰抜けました
井波ご夫妻の協力がなければこの本は世に出なかったとも…いや〜すごすぎる
サンキュー井波律子先生・井波陵一先生 フォーエバー井波律子先生・井波陵一先生
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読書

四月の読書

読んだ
『中国の水の物語 神話と歴史』(蜂屋邦夫、法蔵館 2022)
感想

『アジア人物史 第2巻 世界宗教圏の誕生と割拠する東アジア』(姜尚中監修、集英社 2023)
隋末唐初の人物に関しては全部読みました
感想が難しいけど隋末唐初の人物について知りたいときに初手に手に取って欲しい本ではないかもしれない

『学研まんが NEW世界の歴史3 アジアの古代文明と東アジア世界の成立』(近藤二郎監修、河伯りょうイラスト、学研プラス 2016)
久しぶりに読んだらこんなに創作要素強かったんだ…と思いました。好みと合わなくて残念
楊廣x李世民要素がちょっとあるのでそこだけ味わいます

読み途中
『大唐帝国の女性たち』(高世瑜著、小林一美、任明訳、岩波書店 1999)
『衣服で読み直す日本史 男装と王権』(武田佐知子、朝日新聞社 1998)
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読書

『大唐帝国の女性たち』をちまちま読んでる
李隆基って典型的な「女好き」(女体は好きだが女性に人格や尊厳があることを理解していない)なのに後世楊貴妃との悲恋(悲恋でもなんでもない自業自得の破滅)が物語化されたことでイメージアップされてるのでは…と思った次第です

読書

高世瑜『大唐帝国の女性たち』ようやく買った
あまりに…名著…

読書

『中国の水の物語 神話と歴史』(蜂屋邦夫、法蔵館 2022)
神話時代から遡って中国の河川史を語る本かと思ったら神話時代中心に治水を論じる本で全然違いました
でも面白いし圧倒的にサクサク読めるので一冊ペロッと読めてしまった…すご蜂(屋先生)
第一章「洪水と治水の神話」:神話に反映された洪水や治水の問題を検証
第二章「中国文明の発祥と古城と水利施設の発展」:遺物や歴史を通じて中国文明の発展を検証
第三章「黄河と長江」:黄河と長江の歴史や流態について
の三章がメイン、最後に岣嶁碑について論じる附論「禹王と岣嶁碑」が附されてます
洪水や治水を軸に中国神話を読む第一章が好き
あと第三章で「長江流域は雨量も多く水路は入り組み土壌は肥沃で温暖な気候で農耕に適した土地だが、湿潤な風土と吸血虫などによって病気が多発し人口増加を妨げた」「著者が80〜90年代に南方に行ったときも吸血虫の発生で今ある川をまるごと埋め立て新しい川を掘る情景と遭遇した」とか書いてて長江流域…ってなった
同じシリーズの『中国の水の思想』も読みたい

読書

二月・三月の読書

『東アジアの王権と秩序―思想・宗教・儀礼を中心として』(伊東貴之編、汲古書院 2021)
調べ物で一部読んだんですが収録されている中国史関連の論文たぶん全部面白いです
古勝隆一「隋朝における一切経書写の意義―「宝台経蔵」をめぐって」を発見できてラッキー

『中国文化の統一性と多様性』(渡邉義浩編、汲古書院 2022)
これも調べ物してて読んだ本。柿沼陽平「中国古代禿頭攷」のおかげで鮮卑の頭髪事情がちょっと理解できました

『中国歴代女性像展 : 楊貴妃から西太后まで』(古代オリエント博物館、旭通信社 1987)
楊貴妃から西太后までとタイトルにあるけど展示内容は戦国秦〜清朝までカバーしてます
瀬戸内寂聴さんのコラム本の方では中野美代子先生が武則天とその周辺女性についてガッツリ語ってたり、あと『中国春画論序説』でちょっとだけ触れていた纏足が普及した理由についてもしっかりめに書いてあって嬉しかったです

『学研まんが世界の歴史6 激動の東アジアと唐の皇帝玄宗』(学研プラス 1992)
すでに語ってるけど内容も堅実だし李世民さん可愛いしで神本です

『唐―東ユーラシアの大帝国』(森部豊、中央公論新社 2023)
買ったけどまだ心の準備ができてないので読めません

『古代遊牧帝国』(護雅夫、中央公論社 1976)
タイトルのせいで知られてないけど突厥史本だよというツイート見てそうなの?となって買いました
だいぶ前に読んだものの隋末唐初の記述が薄かった記憶しかないです。ほんとうにその記憶しかない

『五代十国人物鑑』(河一樂、2023)
ちまちま読み進めてようやく後唐に突入したんですけどパパ似の李存勗くん可愛い
私は楊廣や李隆基といった皇帝たちが晩年グダグダになって破綻する様子を可愛げとして捉えられない方の人間なので、李存勗くんのことも好きになりきれないのが惜しい
後梁のページは君(主の朱温ちゃん)のことが大大大大大好きな100人の臣下を感じられてたいへん良かったです
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読書

試し読みページ見て「ムロタニツネ象先生の描く李世民さんが可愛いっぽい」という理由で買った『学研まんが世界の歴史6 激動の東アジアと唐の皇帝玄宗』(学研プラス 1992)が当たりでびっくりしました
三国志の後半から唐の滅亡までの政治史を簡潔に追いながら、合間合間に中国史上の有名なエピソードを小ネタに挟んでくれるので読みやすいうえにちゃんと面白い
李世民さんが軍才によって台頭しながら即位後は政治制度や律令格式を整えたり文才にも長けた文治の人であることもこの一冊でしっかりわかる
しかもムロタニツネ象先生が描いてるので当然のごとく台詞回しが可愛く、「やっちまえー!」「唐の大ピンチ!」とか言う 可愛すぎ
今読むと古い部分やステレオタイプな表現も多々あるのでそのあたりに過敏な方は避けたほうが無難かもしれません
いやでも三国志末〜唐末をここまでわかりやすく漫画にしている長澤和俊監修とムロタニツネ象先生には驚嘆しかない
森部豊先生の『唐―東ユーラシアの大帝国』も買ったけど、(森部先生の癖を除いて)この本を超える衝撃を得られる気がしない…

読書

調べ物であっちこっちの論文や史料読んでたら本を一冊通して読まないまま二月が終わろうとしてます
ちなみに読んでたのは『東アジアの家族とセクシュアリティ 規範と逸脱』(京都大学学術出版会 2022)のⅡ家族の章
佐々木愛先生の「近世中国における生命発生論――母子間の継承関係と父系制」が朱熹に突っ込んでてめちゃ面白かったです…これでブログに一記事書きたいけど内容を簡潔にまとめられなくて座礁してます

読書

『多元的中華世界の形成: 東アジアの「古代末期」』 | 佐川英治 | 本 | 通販 | Amazon
 『アジア人物史 第2巻 世界宗教圏の誕生と割拠する東アジア』 | 姜尚中, 青山亨, 伊東利勝, 小松久男, 重松伸司, 妹尾達彦, 成田龍一, 古井龍介, 三浦徹, 村田雄二郎, 李成市 | 本 | 通販 | Amazon
 『唐―東ユーラシアの大帝国 (中公新書, 2742)』 | 森部豊 | 本 | 通販 | Amazon

1月に礪波護『文物に現れた北朝隋唐の仏教』も出たのに年始から豊富
『岩波講座世界歴史6 中華世界の再編とユーラシア東部 4~8世紀』に収録されてる佐川英治先生の「十六国北朝隋唐政権と中華世界」がめちゃ面白かったので『多元的中華世界の形成: 東アジアの「古代末期」』 期待大すぎる

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一月の読書

『儒教入門』(土田健次郎、東京大学出版会 2011)
否定するにしろ肯定するにしろ、儒教は東アジアに住む者にとっては、やはり一つの宿命なのである。(p224)
何度目かの再読なんですが何度読んでも面白いです
儒教について「安定して取り出せる要素だけを記述した」と手堅くも、儒教の時間的・空間的な広がりと言説の幅の広さをしっかりと伝えてくれる本
儒教に対する四角四面なイメージをていねいに解きほぐしてくれる入門に最適な一冊だと思います

『中国思想基本用語集』(湯浅邦弘編集、ミネルヴァ書房 2020)
中国の伝統文化、儒教、仏教、道教、民間信仰、近世思想etcに関する基礎的な文献や人物、語句を解説する本
時代順にトピックを立てて用語が分類してあり、用語集ながら中国思想史の流れも鳥瞰できます
初心者が楽しむように設けてあると思われる「第七章 中国古典の名言」をふつうに読みいってしまいました
有名な古事成語ばかりなんだけど改めて原文読むこととかなかったから…楽しい〜

『文物に現れた北朝隋唐の仏教』(礪波護、法蔵館 2023)
分厚!買ったけどまだ読んでません

『隋唐帝国五代史』(岡崎文夫、平凡社 1995)
手元に置いておきたくて買ったんですが、記憶してる5倍くらい李世民さんが誉められてました
李世民さんを「高朗闊達な性格」と形容してるのほんとそれすぎてサイトの人物紹介にこれ引用しようと思った
高朗闊達…気高く明朗で、器量が大きく伸び伸びとした性格…わかりすぎる…
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唐―東ユーラシアの大帝国 (中公新書, 2742) | 森部豊 | 本 | 通販 | Amazon
中公新書から『唐―東ユーラシアの大帝国』が…出る…執筆森部豊先生

読書

礪波護『文物に現れた北朝隋唐の仏教』 (法蔵館、2023)買ったんですが同先生の『隋唐佛教文物史論考』(法藏館、2016)から抜粋して新書にしてるっぽいと気付いて『隋唐佛教〜』の目次見てたら断然こっちの方が欲しくなってきました

読書

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