『隋唐嘉話』宇文士及のごまかし2

唐劉餗『隋唐嘉話』より 宇文士及のごまかし2


太宗嘗止一樹下、曰「此嘉樹。」
宇文士及從而美之不容口、帝正色曰「魏公常勸我遠佞人、我不悟佞人為誰、意常疑汝而未明也、今日果然。」
士及叩頭謝曰「南衙羣官、面折廷爭、陛下嘗不得舉手、今臣幸在左右、若不少有順從、陛下雖貴為天子、復何聊乎?」
帝意復解。
(劉餗『隋唐嘉話』巻上)

李世民はあるとき一本の樹の下におり、立ち止まって「これは良い樹だ。」と言った。傍らにいた宇文士及もまたその樹を美しいと言い、反論しなかった。
李世民は色を正して言った。「魏公(魏徴)は、常々私に佞人を遠ざけるよう諭していた。私は佞人が誰であるか分からず、常に君ではないかと疑って判断がつかずにいたが、今日それがはっきりした!」
士及は叩頭し、陳謝して言った。「南衙(朝廷)では群官が面折廷争(天子の面前で天子の過ちを諌めること)し、陛下は手を挙げて反論もできずにいられました。今臣は幸いにして陛下の左右におります。もし臣が順従でなければ、陛下は貴き天子と言えど、何によって安らげましょう?」
李世民はその意を解し、怒りを解いた。